突然ですが、あなたは「からすのパンやさん」という絵本をご存知でしょうか。
からすのまちの、いずみがもりにある四羽の赤ちゃんが生まれたからすのパン屋の家での出来事を描く物語。作者はかこさとし。
Wikipediaより
我が家の3歳の息子のお気に入りの絵本なのですが、何度も読み返すうちに「これはネットショップでの商売にも通じる、とても深いお話だ」という気づきがありました。
30秒で読む「からすのパンやさん」のあらすじ
すごく簡単に「からすのパンやさん」のストーリーをご紹介します。
カラスのパン屋さんに子供が4羽生まれる
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子育てに忙しく、パン屋が傾きかける
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家のパンをおやつに食べていたら、周りの子供が興味を持ち、買いに来るように
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次第に人気になる
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客の要請により、色々な種類のパンを作る・店をキレイにする
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さらに人気がでるが、街中のからすが買いに来たので大パニックに
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工夫で乗り越える
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めでたしめでたし
といった感じです。ざっくりです。とてもざっくりですが。
どのあたりがネットショップに通じるのか
では、この単純なストーリーの中にどんな深い意図があるのか。作者である、かこさとしさんから話を聞いたわけでもインタビューを読んだわけでもありませんが、僕はこのように感じました。
1 子供が4羽産まれる=モチベーション・動機
人が何かをする時に一番必要なのは、モチベーションです。「お金持ちになりたい」「人に認められたい」「これができるようになりたい」といった欲求もモチベーションになりえますが、最も強く人を突き動かすのは「危機感」だと僕は考えます。
自分自身そうだったのですが子供が産まれたことで「自分がこの子を食わせていかないと、この子は死んでしまう」という危機感から、より仕事に打ち込むようになりました。
つまり、この「からすのパンやさん」夫妻も子供が産まれることで商売に対するモチベーションが醸成された、と考えられます。
最近のネットショップなどでも「なぜ私たちはこの商品を開発し、なぜあなたに届けたいか」といったお店のストーリーや来歴・理由にフォーカスしているところが多く見られます。このモチベーション、言い換えるならお店や店主の「情熱」が顧客の心に火をつけて、買う動機になるのです。ストーリーを理解してもらうことで、他のお店との差別化ができることも大きな理由でしょう。
2 子供の友達がパンを買いにきて人気に=販路の拡大・アーリーアダプター(初期採用者)の獲得・メディアでの紹介・SNSでの拡散
情報過多のこの時代、物を作れば売れるなんてことはありません。「有名人が買っているから」「TVで紹介されたから」「友人にオススメされたから」「SNSでシェアされたから」などが商品やサービスとの最初のタッチポイントでしょうか。
そこから「関心を持ち→調べて→購買して→拡散する」が消費者行動といわれるものです。いわゆる「AISAS」ですね。「からすのパンやさん」夫妻は図らずも、子供たちによって商品が拡散されています。いわば子供たちがメディアやアーリーアダプターの代わりとなって商品を広告してくれた、といったところでしょうか。
3 新しい商品を開発したり、店をキレイにする=お店のブランディング・次の事業への展開
ひとつの商品やひとつのサービスだけでは、お店は存続できません。ひとつヒット商品ができたら、その商品を長く売り続け、さらに新たなヒット商品を作り続けていくことで、お店は大きくなっていきます。
化粧品会社で例えるなら、化粧水がヒットしたら乳液・美容液・パックといったラインナップを作り、さらに今度は乾燥肌用のラインナップ、混合肌用のラインナップ、脂性のラインナップ…といった感じでしょうか。
お店をキレイにする、というのもブランディングのひとつです。ネットショップであれば、サイトをリニューアルして見やすくしたり使いやすくする、というのに通じます。
4 トラブルを工夫で乗り越える=オペレーションの整備、需要と供給のマッチング
絵本の中では、火事だと勘違いした人・事件だと勘違いした人・やじうまなどパンを買いに来た人以外もお店になだれ込みます。そういった「買わない客」「1つだけ買う客(見込み客)」「2つ買う客(ややおなじみの客)」「3つ買う客(常連さん)」それぞれを色の付いた旗に並ばせることで、混乱が収まりました。
これはよくネットショップで見られる、「ダイエットをしたいあなたに・体臭にお悩みのあなたに・毎日の元気に」といった商品カテゴリに近いものがあります。欲しい人・欲しくない人を選別し、ではどのようなものがいくつ欲しいのか、をきっちり誘導してあげることができる。それが売れるネットショップの最低条件です。
まとめ
からすのパンやさんはこの4つのステップを通して「売れるネットショップ」の条件を満たしました。
これをそのまま真似するわけにはいきませんが、ネットショップの運営担当者や店長が売上に伸び悩んだ時に、考え方をうまく切り替える助けになれば幸いです。それではまた。
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